「今を楽しく生きるための終活」講座を開催
――笑いあり、学びありの共同学習会に 参加者20名
福山民商と福山生活と健康を守る会は9月6日(日)、福山民商事務所3階で「今を楽しく生きるための終活」をテーマにした共同学習会を予定どおり開催した。
参加者は20名。講師には広島からセレモニーアドバイザーの中富範太さんを招き、最近の葬儀事情から遺言書まで、幅広いテーマを2時間にわたって語ってもらった。会場には、レジュメのほか福山市発行のエンディングノートや生活と健康を守る会の共同墓の案内も配られ、参加者は開始前から資料に目を通していた。
ユーモアたっぷりの語り口に会場も笑顔
中富さんは「セレモニーアドバイザーという、ちょっと格好いい肩書きをつけていますが、もともとは葬儀業界の人間です」と自己紹介。今の仕事は葬儀そのものではなく、葬儀が終わった後のアフターケアだと明かし、「お寺さんにいつ行けばいいのか」「四十九日はどうするのか」「仏壇やお墓はどうしたらいいのか」といった相談に日々のってきた経験を、軽妙な語り口で紹介した。
講演の後半では、「輪廻転生は、物質の循環という意味では本当にある」と、人間の体をつくる炭素が食べ物や呼吸を通じて自然界を巡っていく様子を、高校化学のアボガドロ定数まで持ち出しながらユーモアたっぷりに解説。宗派による死後観の違いを「裁判」や「新幹線」にたとえる場面もあり、会場は終始笑いに包まれた。
「最後に何を伝えるか」 心に残るエピソード
一方で、アフターケアの現場で聞いたという実話には、しんみりと聞き入る参加者の姿もあった。ある74歳の女性は、夫が亡くなる4日前に「一度でいいから『愛してるよ』と言ってほしい」と頼んだが、その場では拒まれた。しかし2日前、夫は最後の力で手を握り「ありがとうな。愛してるよ」と伝えたという。定年後の旅行を楽しみにしていた64歳男性が、肺がんの妻を看取った話も紹介された。中富さんは「最後に何を伝えるか、元気なうちに何を言っておくかは、本当に大事」と語った。
家族葬・直葬・無宗教葬……変わる葬儀のかたち
葬儀の形も、この数年で大きく変わってきているという。今の主流は10人前後の家族葬で、コロナ前に4割ほどだった割合は、今ではほぼ100%に。「家族葬」とはいえ「家族だけ」という意味ではなく、親しい友人が参列してもかまわない「小規模な葬儀」を指すのだと説明した。お寺を呼ばず火葬のみで済ませる「直葬」は費用を抑えられる一方、「きちんと見送ればよかった」と後悔する家族の声も少なくないという。逆に、お経を読まず、家族があらかじめ司会や挨拶、飾り付けまで企画する「無宗教葬」は、その人らしいお別れの形として増えているそうだ。本人が生きているうちに感謝を伝える「生前葬」の話も紹介され、参加者は熱心にメモを取っていた。
商売人にも通じる「祭壇は小さく、つながりは大切に」
参加者の多くを占める中小業者にとって、特に印象に残ったのは費用の考え方だったのではないだろうか。中富さんは「お葬儀の費用は、祭壇の値段で全体が大きく変わる」と説明。見栄や周囲の目に押されて必要以上に大きな祭壇を選ばず、「本人や家族が納得できる内容を、事前に考えておくこと」を勧めた。また、香典を辞退すると自己負担が増えるケースがある一方、規模がある程度あれば持ち出しが減ることもあると、総額で判断する視点を示した。見積もりを比較し、総コストで判断する商売の感覚にも通じる話だ。供花についても、葬儀社経由だけでなく持ち込みができる会館があり、事前確認しておくと選択の幅が広がるとのアドバイスもあった。
お墓や仏壇の整理についても、具体的な話があった。承継者がいない、子どもが遠方に住んでいるといった理由で「墓じまい」の相談が増えており、墓地の管理者や石材店にまず相談することが大切だという。樹木葬や散骨、手元供養など選択肢は年々広がっており、「どれが正解かではなく、本人と家族が納得できる方法を選ぶ時代」との言葉が印象的だった。仏壇や位牌についても、無理に大きなものを守り続ける必要はなく、仏壇店やお寺に相談すればよいと話した。
遺言書についても、「相続手続きを簡単にするための準備」と紹介。特に公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要で、金融機関の手続きでも使いやすいと説明した。通帳や保険証券、重要書類の置き場所を家族の誰か一人にでも伝えておくことは、日頃の帳簿や書類整理の延長として、経営者にとっても身近に感じられた話だったのではないか。
エンディングノートは「これからをどう生きるか」を書くノート
福山市が発行するエンディングノートについて、中富さんは「『エンド』は終わった、という意味だが、『エンディング』は終わりに向かっている途中」と語り、死後のことだけでなく「これからの人生を、最後までどう生きたいか」を書くものだと紹介。100歳の女性が「若い頃に歩いた銀座を、もう一度歩いてみたい」とノートに書き、家族が車いすで実現させたエピソードも紹介され、参加者から感嘆の声が上がった。納骨場所、宗派、連絡してほしい人、重要書類のありか――この4つだけは元気なうちに書いておいてほしい、とのことだった。
孤独死のない地域をつくる
講演では社会的な視点にも話が及んだ。厚生労働省の地域包括ケア研究会の報告書には、単身や高齢者のみの世帯が主流になる中で、「家族に見守られながら自宅で亡くなる」とは限らない時代が来る、と記されているという。広島市内だけで年間640人、一週間に12人が誰にもみとられずに亡くなっているというデータも紹介され、会場には驚きの声が広がった。中富さんは「孤独死は仕方がないと済ませるのではなく、一人ぼっちの高齢者をなくし、孤独死のない地域をつくるという視点が大事」と述べ、終活は個人の準備であると同時に、地域づくりの課題でもあると訴えた。
質疑応答、そして参加者の声
質疑応答では、「宗派の違う夫婦の場合、どちらの宗派で送ればよいか」「生前葬に呼ばれたら香典はどうすればよいか」など、身近な疑問が次々と寄せられた。中富さんは「最終的には家族が決めること。ただし、元気なうちに本人の希望を伝えておくと、後々の親族間の行き違いを防げる」と丁寧に答えていた。
参加者からは「暗い話題を明るく話してくださり、面白かった」との感想が寄せられた。「近い親友が直葬に近い方向にすると考えているが、直葬は後悔が残るとの話を聞き、確かに……と考え直している」「無宗教の葬儀の話に心動かされた。格式にとらわれず、葬儀はもっと自由でもいいのかもしれない」と、自身や周囲の選択を見つめ直すきっかけになった様子がうかがえた。
中富さんは最後に、「エンディングノートも、遺言書も、死ぬための準備ではありません。自分が最後までどう生きたいのかを考えて、家族と共有するためのもの。準備しておくことで、むしろ今の生活を安心して楽しめるようになります」と締めくくった。福山民商・福山生活と健康を守る会では、今後も会員のくらしに役立つ学習会を企画していく予定だ 。



























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